はす花こどもファミリークリニック 神保詩乃先生には「心エコーで覗くPOTSの病態」をお話頂きました。
診療・研究の背景に、精神的なものとされてしまっている子ども達に不調理由を説明できないか、そして起立性調節障害の小児は小心臓(スモールハート)の合併が多いとされているため、循環器医として心臓を評価することを教えて頂きました。
POTS100例に臥位と座位での心エコー検査を行うと、心機能そのものには異常はないが、POTSでは臥位でも座位でも、1回拍出量(※1)が低下し、下大静脈(※2)の径も小さいことがわかり、これにより静脈還流量が少ないのではないか、と示して頂きました。
※1 1回拍出量:心臓の1拍の収縮によって動脈に拍出する血液量
※2 下大静脈:両足の静脈とおなかの静脈の血管を集めて、心臓に送る静脈
また臥位から座位にしたときの下大静脈の径の変化は、収縮するグループと拡張するグループに分かれ、特に収縮グループでは座位の心拍数増加が大きいとのことでした。
すなわちPOTSでは胸腔内の血流が低下していて、姿勢変化時に循環応答である静脈還流量の増加がおきず、心機能のみ正常なので心拍数増加がおきるのではないか、と教えて頂くとともに、
循環応答が正常ではない原因に、交感神経、圧受容体、末梢神経などのさまざまな病態が言われていますが、特に収縮群では下肢血管の応答不全としてのNeuropathic POTSが考えられること、
水分塩分摂取や下肢運動は理にかなっており、原因別の治療がのぞましいことを教えて頂きました。
各講義の実施模様を順次掲載しています