2018年11月28日
POTS and Dysautonomia Japan

はじめに

これまで日本では、他の病気を伴わない起立性低血圧、体位性頻脈症候群、神経調節性失神などは起立性調節障害として知られ、なんとなく思春期、一過性、比較的軽症な病気であると捉えられてきました。
しかし実際は、思春期以外で発症する方、数年たっても回復しない方、重症な方がいます。このような患者さんは、既知の疾患概念とは異なるため、適切な診療・支援・理解を得づらく、特に困難に直面しています。加えて海外では、小児に限定せず成人もかかる起立不耐症という病気として知られ、さまざまな病態があると理解されています。
このような背景から、国内の起立不耐症・起立性調節障害に関する実態確認の必要性を感じ、インターネットアンケート調査を実施いたしました。実施時期は2017年9月~12月の約3カ月間、有効回答数n=398を対象に集計、分析を行いました。
なお、本調査結果の一部は第71回日本自律神経学会総会において報告いたしました。
調査にあたり、アンケートにご協力下さった皆様、多くの方にお声がけ下さったNPO法人起立不耐症・起立性調節障害の会に深く感謝申し上げます。

主な調査結果

〇発症年齢、罹患年数(難治度)、歩行能(重症度)
発症年齢のピークは13歳ですが、10歳以下も成人も発症していました。罹患年数は3年未満が53%、3年以上が47%で、罹患年数10年以上も10%でした。重症度を歩行能で確認したところ、ほとんど歩けない歩行能100m未満が18%である一方で、歩行能3000m以上も23%でした。すなわち、罹患年数も重症度も、非常にばらつきが大きいことがわかりました。

罹患年数を3年以上と3年未満、歩行能を1000m未満と1000m以上で分類すると、罹患年数3年以上かつ歩行能1000m未満という重症難治の割合は、全体の22%でした。すなわち、全体の約8割は3年未満で回復したり、重症ではないかもしれませんが、残りの約2割は重症かつ回復しづらい(以下、重症難治)ことがわかりました。

〇発症のきっかけ
発症のきっかけは、過労、人間関係、身体の成長が多かったですが、さまざまなきっかけで発症することがわかりました。

〇起立不耐以外の症状
起立不耐以外にどのような症状があるかを確認したところ、全体では、朝の起床困難、めまい・たちくらみ、全身倦怠感が多いという結果でした。ただし約2割の重症難治は、顕著に多彩な症状があらわれやすいことがわかりました(特に、全身倦怠感、集中力低下、夜の入眠困難、動悸、吐き気・食欲不振、頻脈、息切れ、光・音過敏、体温調節障害、下半身の冷え、便秘、記憶障害、酷い月経痛など)約2割の重症難治は、これまで信じられてきた疾患概念・病態とは異なる可能性があります。

〇治療と効果
治療とその効果は、タイプ別に確認しましたが、起立性低血圧、体位性頻脈症候群、神経調節性失神のどのタイプでも「効果のあった治療方法は無い」という回答が最も多く約4割でした。治療方法には課題があり、医療機関にかかってもすぐに良くなるとは限らないことがわかりました。

〇日常生活の困難さや期待する支援
20歳未満では、学校に行けない、無理をして症状悪化、運動できないが多いという結果でした。また退学・転校など就学に困難が出ている患者さんが約2割、指定難病などの公的支援を期待する患者さんが約3割いました。
さらに20歳以上では、就労に困難が出ている患者さん、公的支援を期待する患者さんはそれぞれ約6割にのぼります。

まとめ

本調査結果から、この病気は罹患年数も重症度も非常にばらつきが大きく、医療機関を受診してもすぐに良くなるとは限らず、それぞれの患者さんに合った診療・支援・理解が必要であることが明らかになりました。
また、特に約2割は、重症難治かつ多彩な症状を呈することがわかり、これまで信じられてきた疾患概念・病態とは異なる可能性があります。国内・海外の報告を参考にしながら、慎重な経過観察と研究推進が必要であると考えられます。
就労・就学に困難が出ている患者、指定難病などの公的支援を訴える患者も、20歳未満で2, 3割、成人では約6割にのぼることからも、医療面、社会面ともに、しっかり対応しなければならない病気であることが明確になったと考えられます。
なお、未診断患者が相当数居る可能性があるため、疾患の認知度を上げる取組もあわせて必要であると考えております。

【本文】第1回起立不耐症・起立性調節障害インターネットアンケート調査のご報告
【別紙1】【報告書】第1回起立不耐症・起立性調節障害インターネットアンケート調査報告書
【別紙2】【参考】第1回起立不耐症・起立性調節障害インターネットアンケート調査報告書(本人回答のみ)
【別紙3】【調査票】第1回起立不耐症・起立性調節障害インターネットアンケート調査


参考:米国のPOTS大規模調査 中間報告