兵庫県立こども病院小児循環器内科 小川禎治先生には「POTSの病型の分類とそれに基づく治療の実践」をお話頂きました。

POTSの主な原因は国際的・学術的に3種類とされており、原因ごとに治療方法を検討する重要性を教えて頂きました。
3種類とは、神経障害性(Neuropathic)POTS、循環血液量減少(Hypovolemic)POTS、高アドレナリン(Hyper adrenergic)POTSです。一人の患者さんで複数を合併している患者さんもいます。共通の治療には、水分塩分摂取、運動、心拍数を下げるビソプロロール(メインテート)、プロプラノロール(インデラル)、イバブラジン(コララン)の内服があります。

1. 神経障害性(Neuropathic)POTSは立った時の足(やおなか)の血管の締まりが悪く、下半身に血液が溜まるタイプです。膝下が赤くなります。血圧や血漿ノルアドレナリン値は低めとのことでした。治療は共通的な治療に加え、着圧ストッキング、ミドドリン(メトリジン)、アメジニウム(リズミック)、フルドロコルチゾン(フロリネフ)が効きやすいことを教えて頂きました。

2.循環血液量減少(Hypovolemic)POTSは全身の血液量(血漿・赤血球ともに)が少ないタイプです。レントゲンの心胸郭比は小さくなります。治療は共通的な治療に加え、フルドロコルチゾン、デスモプレシン(ミニリンメルト)が効きやすいことを教えて頂きました。

3. 高アドレナリン(Hyper adrenergic)POTSは交感神経が過剰に興奮しているタイプです。血漿ノルアドレナリン値は高くなります。血管は締りがちで、起立時の血圧はむしろ高めです。脈拍は他の種類のPOTSよりも更に高めになります。治療においては多くの患者さんでビソプロロールやイバブラジンの量が多めになります。


各講義の実施模様を順次掲載しています

【実施模様(1)】「POTS概要~500名の診療経験から得た実践アプローチと留意点~」(泉井雅史先生)
【実施模様(2)】「POTSに対する臥位エルゴメーター開発による運動療法」(石崎優子先生)
【実施模様(3)】「POTSの病型の分類とそれに基づく治療の実践」(小川禎治先生)
【実施模様(4)】「POTSの薬物療法を考える」(松浦優子先生)
【実施模様(5)】「POTSと神経発達症 ~アプローチのし方を中心に~」(多田光先生)
【実施模様(6)】「POTSに対するホルター心電計を用いた心拍変動解析 ― POTSでは自律神経はどの様に変動するのか?―」(高橋健先生)
【実施模様(7)】「心エコーで覗くPOTSの病態」(神保詩乃先生)