【実施模様2】POTS・起立不耐症セミナー2026 ~日常生活の取り戻しをめざして~

【実施模様2】養護教諭の専門性を活かした健康相談と教育的支援(上原 美子 先生)

埼玉県立大学 保健医療福祉学部・埼玉県立大学大学院 保健医療福祉学研究科の上原美子先生に「養護教諭の専門性を活かした健康相談と教育的支援」を講義頂きました。

表紙のスライドと上原美子先生

一人一人のこども時代を護る

上原先生は2026年3月開催の学術集会「日本学校健康相談学会」の大会長を務められ、学校保健が子どもの幸せに責任を果たす「学校福祉」を広めていきたいとの思いで、「一人一人のこども時代を護る」をテーマに掲げたとのことでした。


保健室に集まる情報

養護教諭は、授業中や登下校の様子、健康診断、友達関係など、多様な情報から「子供たちの小さな変化に気づく目」を心掛けているとのことでした。


養護教諭に求められる力

養護教諭ならではの関わり方として「専門的コミュニケーション」をご紹介頂きました。
「体の訴えは、まず体から受け止める」「子供が語り出すのをゆっくり待つ」「子供が発する微かな発信を大切にする」といったアプローチです。
そして緊急度などに応じて、管理職、担任、学年主任、職員会議、学校医などと協力し、組織的に対応するとのことでした。


養護教諭の特性

養護教諭は「感情をコントロールし、待つことができる」を学んでいて、特に「ネガティブケイパビリティ(答えの出ない事態に耐える力)」をご紹介頂きました。
「すみやかな解決が難しく、解決するまでの間の宙ぶらりんの状態を持ちこたえる」職種であり、ぜひ皆様と養護教諭が協働できればというお言葉を頂きました。


学校の健康度を高める

子どもたちが声を上げやすくなるには、学校の健康度を高めることが不可欠であり、
まず教職員が「心理的安全性」を感じられることで、児童生徒も安心して相談できるようになり、「心理的安全性を感じられる場」につながることを解説頂きました。


健康相談の事例

文部科学省が平成23年に初めて作成した健康相談のマニュアルは、事例を取り上げ画期的でしたが、この時は起立性調節障害は掲載されていなかったとのことでした。
その後、令和3年の改訂版「教職員のための子どもの健康相談及び保健指導の手引き」(P45)では、養護教諭が起立性調節障害を疑い、チェックシートを用いて小児科受診につながった事例が掲載されていることを教えて頂きました。


校内研修について

今月号の専門誌「心とからだの健康2026年3月号」には、起立性調節障害のための教員向け校内研修の企画書が掲載されていることをご紹介頂きました。
「病気を正しく知る」「早期発見し、よりよい支援に努める」ことを目標とした研修のあり方、動画視聴の活用、先生方のグループワークの進め方などが示されているとのことでした。
また研修後の「校内研修だより」として、3つの視点「身体の病気」「怠け・さぼりと誤解されやすい」「早期に把握し、適切な対応・治療で症状軽減」などが示されていることもご紹介頂きました。


家庭・医療・学校の三者連携

医師からの診断書や意見書があれば学校は動きやすくなること、小さな成功体験を重ね、それを認めることが大切であること、家庭での生活、学校での学習面や登校支援と連携をとり、責任を持って子ども時代を護る取り組みを進めていきたいと、心強いお言葉を頂きました。

質疑応答では

学校に理解してもらうには、医学的説明に加え、具体的な日常の困り事、現実的な配慮(別室登校等)をお話することが効果的であると教えて頂きました。
担任に加え、養護教諭やスクールカウンセラーに味方になって頂いたり、個別の状況を伝えるための「診断書や意見書」「生活管理指導表」の活用も勧めて頂きました。
療養が長期化する場合、現状を否定せずに肯定し、できたことに一緒に目を向ける姿勢が大切で、保護者と教員は同じ方向をみている大人として、焦らず一緒に歩むことの大切さを教えて頂きました。


POTS・起立不耐症セミナー2026の各講義

準備が整った講義から、順次掲載いたします。

(1)POTS・起立不耐症 ー誤解されやすい病態の診断・治療と鑑別すべき病態ー(泉井 雅史 先生)
(2)養護教諭の専門性を活かした健康相談と教育的支援(上原 美子 先生)
(3)POTS・起立不耐症の理解と、個別化医療に向けた取り組み(佐藤 恭子 先生)
(4)起立不耐症患者の就学・就労時、復学・復職時の留意点について(岡 孝和 先生)
(5)疾患啓発の進捗、課題、トピックス(POTS and Dysautonomia Japan)

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