POTSの症状が現れる背景にはさまざまな病態があり、症状・所見のちがいによって以下のようなサブタイプがあります。しかしこれらは完全に分類されるものではなく、ひとりの患者さんで2つ以上のサブタイプに該当することがしばしばあります。

神経障害性POTS(Neuropathic POTS)

起立により交感神経が働く時に、ノルアドレナリン分泌が不十分で、血管収縮が適切に行われず、その代償としてPOTSが起きるタイプです。血液が内蔵血管や下肢に貯留し、静脈還流量が減少してしまい、交感神経の働きが強まってPOTSになります。発汗テスト、QSART、皮膚生検などで自律神経障害があるかどうかを確認します。


低容量POTS(Hypovolemic POTS)

体内の総血液量、血漿量、赤血球量が低下して、その代償としてPOTSが起きるタイプです。
循環血液量の調節はレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAA系)が行いますが、血液量の低下のため、起立した際にRAA系の働きが強まってPOTSになります。ただし一部のPOTS患者では適切にRAA系が働いていないという報告もあります。


高アドレナリンPOTS(Hyperadrenargic POTS)

起立時にノルアドレナリン分泌が急上昇して(>3.55 nmol/L (600 pg/mL)POTSとなるタイプです。
交感神経系による過度の血管収縮により、起立時の高血圧が起きる場合があります。(起立時の収縮期血圧が10mmHg以上上昇)また震え、不安、冷え、汗の異常を訴える場合があります。


ノルアドレナリン輸送物質欠損

高アドレナリンPOTSのまれなケースとして、遺伝的なノルアドレナリン輸送物質(norepinephrine transporter (NET)) の欠損がある場合があります。


マスト細胞(肥満細胞)活性化(Mast Cell Activation)

POTSの中に頻脈に加えて酷い顔面紅潮が現れる患者がいます。マスト細胞の活性化が関係していると言われています。起立時に頻脈と高血圧が起きる高アドレナリンPOTSでよく見られ、呼吸困難、頭痛、めまい、胸部不快感、胃腸の症状も現れます。酷い顔面紅潮の症状が出て4時間の間の尿検査で、ヒスタミン代謝物質の濃度上昇によりしばしば診断できます。


身体機能低下POTS(Deconditioning)

多くのPOTS患者は活動量の制限により、徐々に身体機能の低下が見られることがあります。あるいは他の疾患や寝たきりになった後に身体機能低下が起き、POTSのような所見が見られる場合もあります。先に身体機能が低下して続いてPOTSの症状が現れているのか、またはPOTSの二次的症状として身体機能低下が現れているのかは明らかではありませんが、多くのPOTS患者に心血管機能低下があります。有酸素運動などが有効と言われています。


自己免疫性POTS(Autoimmune POTS)

以下のような自己免疫性POTSが報告されており、研究がすすめられています。

● 抗gAchR抗体(抗ガングリオニックアセチルコリンレセプター抗体):成人POTS患者の約15%で陽性との報告があります。
自己免疫性自律神経節障害(Autoimmune autonomic gangionopathy, AAG)

● 抗α1-AR抗体, 抗β1-AR抗体, 抗β2-AR抗体(抗アドレナリンα1受容体抗体、抗アドレナリンβ1受容体抗体、抗アドレナリンβ2受容体抗体)
体位性頻脈症候群における抗アドレナリン受容体自己抗体
他の自律神経に関する自己抗体について|POTSにおける抗ムスカリン性アセチルコリン受容体抗体の研究(2)

● 抗mAChR抗体(抗ムスカリン作動性アセチルコリン受容体抗体) 1,2
POTSにおける抗ムスカリン性アセチルコリン受容体抗体


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