「起立不耐症・起立性調節障害セミナー2023 ~重症例・難治例の理解と診療の最新動向~」では、参加者のみなさまにアンケートを行い、患者様がおかれている状況をおしえて頂きました。
患者様のおかれている状況
・参加者は、患者さんが約35%、ご家族が約50%に加え、医療・福祉関係者、学校の先生にもご参加頂きました。
・患者様の年齢層は、小児と成人が約50%ずつでした。
・発症からの期間は、6カ月未満から、10年以上まで、さまざまな罹患期間の方がいらっしゃいました。
・自力で外出できるおおよその頻度は、週5回以上の方は約25%で、残りの約75%はこの病気による外出の難しさが推察されます。特に週1回以下の方が50%ちかくで、日常生活に大きな支障をきたしていると考えられます。
・自力で外出できるおおよその時間帯について、15時~18時のみ50%を超えていますが、午前中は20%以下で、やはり通常の日常生活の難しさが推察されます。また1日中外出できないという回答も30%を超えていました。
・思い当たる発症のきっかけは、精神的負荷、身体的負荷、身体の成長に加え、新型コロナウイルス感染症、予防接種、思い当たるきっかけが無い方などさまざまです。
参加者のみなさまからの声
参加者のみなさまから医療や社会に向けて、以下のような声を頂きました。
体調・生活について
全体的につらいし、今後どう生きていったらいいのか分からない。
20代患者さま
症状の改善が乏しく、日常生活も社会生活も、一般的なラインに届くことができません。同年代の方達のライフステージが変わっていく中、あらゆる経験が抜けたまま、年齢と罹患年数だけがかさむことに、年々生きづらさを感じています。
病態の解明や、新たな治療法が見つかることと、社会の「病気」としての理解と、支援制度などがすすみ、患者のQOLが少しでも上がることを願っています。
20代患者さま
大学に通えません。就活や働くこともできません。まだなにか方法はあるのではないか?そう自問しても体が動かない諦念の日々です。せめて自立して、両親に独り立ち出来るところを見せて安心させたいです。
20代患者さま
慢性疲労症候群のPS8と診断されて20年。治療しても効果が無く、座位もつらい毎日で、少しでも改善したいです。今回は家から参加可能な機会をありがとうございます。
40代患者さま
診療を受けられない・医療の無理解
16歳という年齢で、小児科も一般診療も、電話で問い合わせた時点で、年齢を理由に断られて困っています。
10代患者さまご家族
起立性調節障害について調べると、朝起きれないことや、18歳以下の情報が多く、POTSの起立に伴う頻脈や、成人患者の情報がとても少なく感じます。
POTSを診療できる医療機関自体がとても少ない上に、ほとんどが小児科で、成人を診療する病院があまりありません。しっかり診療できる医療機関がもっと増えて欲しいです。
20代患者さま
起立性調節障害を診察頂けるか、近隣クリニックに電話で相談したところ、片っ端から断られました。やっと診てもらえたクリニックで紹介状を頂き、病院へ行くと、第一声が「サボってるの?」でした。
娘も私もびっくりして言葉が出ず、娘は夜に泣いていました。皆に分かってもらえない、サボってると思われている、という思いから、症状が悪化し、通学出来なくなりました。
頼りになる医師が、近くに居ないことに絶望しています。今後どの病院へ行けば良いか、また同じように対応されるのか、不安です。
10代患者さまご家族
起立性調節障害が悪化し、倦怠感が著しい時に、小児科医に「もう病気は治ってるから学校に行けるよ」と言われました。
学校からも「まだ登校できないのか」「学校で試験を受けなければ成績は付けられない」と言われ、途方にくれました。 病気に対する理解を得難く、体調も心理的にもつらい経験をしました。
10代患者さまご家族
メトリジンが効かない=心の病気でしょ?と言われ、まるで仮病のような扱いをされ、つらい思いをしていましたが、医師にこちらの患者アンケートを見せたところ、考えを変えてくれました。講演でも心の病気ではなく、身体の病気だと断言して頂けることに救われる思いです。新しいお薬や治療法にも期待しています。企画運営に携わってくださる皆様本当にありがとうございます。
10代患者さまご家族
今回のセミナーで、同じような症状で悩み、同じように受診できる・信頼できるお医者様を近くで見つけられず、つらい思いをしている方が沢山いるのだと驚きました。そしてこの病気を広めて研究を進めて下さっている事を知り、心強く思います。
10代患者さまご家族
治療方法や病態の研究への願い
人生の楽しいはずの時期を、POTSのせいでつらいものになっていて、親としても見ていてつらいです。画期的な治療法を見出して欲しいと切に願います。
10代患者さまご家族
POTS重症です。子供の頃に当たり前に出来ていたことを、病に奪われ続けて10年以上経ちます。立つこと、歩くこと、人と話すこと、勉強、家事など、健康な人にはたやすいことがとても疲れます。働くことはいまだに出来ていません。
早く特効薬が出来て欲しいです。この身体のまま生きなければいけないのは本当につらいです。
30代患者さま
自己免疫性の自律神経障害の病態が解明され、理解が深まってほしいです。
20代患者さま
ただちに死に至る病気ではないとはいえ、快復の道のりがみえず、とても悲しくつらいです。研究がすすむためにできることがあるなら、協力させていただきたいです。
10代患者さまご家族
勉強はもちろん、日々の生活もままならず、未来への希望が持てず、精神的にもつらい日々です。研究が進み、治療に繋がることを切に願っています。
10代患者さまご家族
医療の地域差/関連疾患の周知
若い医師は起立不耐症をご存知の方が少しずつ出てきた印象はあり、地方でも治療の選択肢が増えるように活動できたらと思いますが、啓発で医師に知ってもらい、治療を学んで頂くまでにつなげることが難しいです。
この会のリーフレットはお渡しする予定です。この講演を聞きにきて下さっていたらありがたいです。
40代患者さま
症状が似ている別の病気(脳脊髄液減少症)も、セットで浸透をお願いしたいです。1つの病名に確定判断されると、疑う余地なく、治療・投薬・経過観察がつづきます。
別の病気だった場合に、患者・家族の人生がさらに狂います。全国の起立性調節障害を確定診断する医師は、共有伝達して欲しいです。
10代患者さまご家族
社会の支援
国レベルで考えてもらいたい。学校によって対応にちがいがありすぎる。
10代患者さまご家族
同病の患者さんに対する身体障害者手帳や補装具の申請について、診断書や意見書を書いて下さる医師がなかなかおらず、本当に困っています。
60代患者さま
コロナ後遺症としてのPOTSをもっと知って欲しい。
50代患者さま
学校教育において、退学や留年になったり、進級や受験にハンデになっています。学びの保障に救済ある社会になってほしいです。
10代患者さまご家族
子どもの通う通信制高校の母体の学習塾が、医療アドバイスをしながら、生活支援、学習支援を行う「訪問看護ステーション」を立ち上げました。とてもすばらしい取り組みですし、全国に拡がればいいなぁと思っています。
いま実際に困っている人たちがたくさんいて、病気を詳しく教えてくださるこちらのHPは勉強になりますし、勇気が湧いてきます。みんなが穏やかに日常生活を送ることができればいいなと思います。
10代患者さまご家族
起立性調節障害の親の会に、夫婦で参加し、心の支えになっています。メンタル的に不調な方がいたら、そうした会への参加をおすすめしたいです。
10代患者さまご家族
まわりの理解や気づき
見た目が体調が悪く見えないようで、家族からも勉強したくないだけ、サボりたいだけ、ダラダラするな、早く寝ないから朝起きれないんだ、などと言われてつらい思いをし、理解してくれるまでに時間がかかりました。
しかし今は、家族は理解し、過ごしやすい環境を作ってくれ、いま出来るやりたいことをやりなさいと言ってくれます。周りはまだ心無い言葉を言う人もいますが、治ると信じ、将来やりたい事のために、いま出来る勉強をしています。
これを飲めば治るという特効薬が無い中、気持ちに寄り添い励ましてくれ、研究してくださっている先生方に感謝しています。
10代患者さま
発症6年目になり、生活の工夫や内服を試し、PS7からPS5前後になりました。生きることだけに一生懸命でつらかったのに、あっという間でした。病気のせいでたくさんのものを失いました。症状はまだ安定せず生活は成り立ちません。
でも病気のおかげで、こういう場所や、障害があってもそのままをうけとめてくれる人、親身になってくれる医師にも出会いました。
そして、自分が本当に好きなこと、大事な人、どう生きたいのか、いろんなことに気づかされ、人としてのそれぞれの健やかさや豊かさとは何か、教えてもらえたような気がします。
本人もご家族もご自身を責めずに、頑張ってるね、と抱きしめて欲しいです。
40代 看護師・患者さま
またセミナー実施後のアンケートでは、有意義なセミナーだったとのお声をたくさん頂きました。これからもセミナーやさまざまな活動・働きかけを通じ、起立不耐症・起立性調節障害の理解が深まり、診療や支援につながるなど、お一人お一人が良い方向にすすむように取り組んでまいります。
■ 過去のセミナーの実施模様・アンケート結果 |