Topics#01 コロナ後遺症とPOTS・起立不耐症

新型コロナウイルス感染症の後、さまざまな症状が現れるケースがあることがわかってきており、日本ではコロナ後遺症と言われています。

期間の定義は、米国では発症から4週経過後に症状が現れていることをPost-COVID Condition1)、英国では発症から4~12週をOngoing symptomatic COVID-19、12週以降をPost-COVID-19 syndrome、Long COVIDは4週以降をまとめた呼び方2)としており、おおむね4週以降に症状が現れていることを言います。


どのくらいの頻度でコロナ後遺症となるかは、まだはっきりしておらず、5%~80%までさまざまな報告があります1)
どのような人がコロナ後遺症になるかは、新型コロナウイルス感染症の重症度(重症~軽症、無症状)にかかわらず、また年齢にかかわらず、コロナ後遺症になることが報告されています1)。性別は女性のほうが多いと言われていますが、詳細はまだよくわかっていません1)
予後は、数週間や数カ月で良くなるケースも、1年後も症状が続いているケースも報告されています。


コロナ後遺症の分類は英国立衛生研究所(NIHR)の考え方3)を参考にすると、新型コロナウイルス感染症の急性期の肺、心臓、血管、肝臓、腎臓などの損傷、集中治療後症候群、急性期症状の遷延、感染症後症候群などに分けることができ、またこれらの重複もあると考えられています。

症状は、システマティックレビューおよびメタアナリシスを行った報告4)によると、50以上あるとされ、特に多い症状は、疲労感(58%)、頭痛(44%)、注意力の低下(27%)、脱毛(25%)、呼吸困難(24%)、他にも肺、心血管、神経、その他の症状が現れることがわかってきています。

具体的に比較的長期の経過を追跡した報告として、下記を挙げます。


1. ノルウェーのベルゲンで、新型コロナウイルス感染症患者(入院65名、自宅隔離247名)を経過確認したところ、6カ月後に61%になんらかの症状がありました。特に16~30歳の自宅隔離例(比較的軽症)の52%に症状があり、主に味覚嗅覚障害(28%)、疲労感(21%)、呼吸困難(13%)、集中力低下(13%)、記憶障害(11%)、頭痛(11%)5)で、30歳以上の成人でみられる症状が若年にも現れていました。


2. スイスのジュネーブ大学で、新型コロナウイルス感染症の外来患者410名をオンライン等で経過確認したところ、7カ月~9カ月後に39%になんらかの症状があり、主に疲労感(20.7%)、味覚嗅覚障害(16.8%),、呼吸困難(11.7%)、頭痛(10.0%)でした。また有症状患者のうち、症状が1つのみの例は27.6%、症状が6つ以上ある例も12.6%でした6)


3. 中国の武漢で、新型コロナウイルス感染症で入院していた患者1276名に対する経過確認では、6カ月後に64%、1年後に49%になんらかの症状があり、1年後の主なものは疲労感や筋力低下(20%)、睡眠障害(17%)、関節痛(12%)、脱毛(11%)、疼痛や不快感(29%)、不安やうつ(26%)、6分間の歩行距離が基準値未満(12%)でした7)


4. 新型コロナウイルス感染症のサポートグループとPatient-Led Research Collaborativeのオンライン調査で、56か国の3762例(確定1020例、疑い2742例)を経過確認したところ、35週後に91.8%になんらかの症状がありました(確定群と疑い群で有意差なし)
症状は、経過で消える症状、変わらない症状、発症から2か月くらいまでに新たに現れる症状があり、7カ月目での症状の数は平均13.79個でした。
6カ月後の症状には、全身性症状(疲労感、労作後倦怠感など)、認知機能(ブレインフォグ、記憶障害など)、頭痛や不眠、感覚運動(味覚嗅覚障害など)、筋骨格(筋肉痛など)、心血管(動悸など)、肺(息切れなど)などが比較的みられました。
就業影響は、22.3%がコロナ後遺症のため就労できなくなり、45.2%が勤務時間を減らしていました。
起立位の脈拍上昇(30bpm以上)は頻脈で脈拍測定を行った例の30.65%にみられ体位性頻脈症候群(POTS)の可能性があり、労作後倦怠感は全体の89.1%にみられ筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)の可能性が気がかりな状況です8)


先程の分類の一つの感染症後症候群は、新型コロナウイルス感染症の流行以前より、感染症後にME/CFS、POTSや自律神経障害などを発症するケースがありました。ただ、まだ十分に解明されておらず、疾患の認知度が低く、診療医療機関が少なく、一般的な検査で異常値になりにくく、皆にぱっと効くような特効薬がないことが課題です。

上述の報告からも推測されますが、新型コロナウイルス感染症後にME/CFS、POTSや自律神経障害に至るケースが出てきており、北米や欧州などで、病態解明、検査、治療に関する研究が強化されています9-12)


POTSや起立不耐症は、症状として動悸を訴えるケース以外に、呼吸苦、息切れ、胸痛、強烈な全身倦怠感などの症状で起立試験やヘッドアップチルト試験をすると、POTSや起立不耐症とわかることがあります。
コロナ後遺症における自律神経障害には、起立不耐症や動悸・頻脈に加えて、体温調節障害、不安定な血圧、新たな高血圧、胃腸症状などがみられます13)
いずれも一般的な検査では異常値になりにくく、診察で見過ごされてしまうことがあり、注意が必要です。

コロナ後遺症で症状に心当たりがある方は、疾患説明や医療機関のお知らせをご確認ください。

Topics#02 コロナ後遺症とPOTS・起立不耐症(2023年3月)はこちら
体位性頻脈頻脈症候群(POTS)
自律神経障害(Dysautonomia)
医療機関のお知らせ(起立不耐症研究会にリンクします)

参考

1)Background – Evaluating and Caring for Patients with Post-COVID Conditions, CDC external-link-symbol

2)COVID-19 rapid guideline: managing the long-term effects of COVID-19 – Guidance, NICE external-link-symbol

3)Living with COVID: NIHR publishes dynamic themed review into ‘ongoing COVID’, NIHR external-link-symbol

4)Lopez-Leon S, Wegman-Ostrosky T, Perelman C, et al. More than 50 Long-term effects of COVID-19: a systematic review and meta-analysis. medRxiv [Preprint]. 2021 Jan 30:2021.01.27.21250617. external-link-symbol

5)Blomberg B, Mohn K.GI, Brokstad K.A, et al. Long COVID in a prospective cohort of home-isolated patients. Nat Med 27, 1607–1613 (2021). external-link-symbol

6)Nehme M, Braillard O, Chappuis F, et al. Prevalence of Symptoms More Than Seven Months After Diagnosis of Symptomatic COVID-19 in an Outpatient Setting. Ann Intern Med. 2021;M21-0878. external-link-symbol

7)Huang L, Yao Q, Gu X, et al. 1-year outcomes in hospital survivors with COVID-19: a longitudinal cohort study. Lancet. 2021 Aug 28;398(10302):747-758. external-link-symbol

8)Davis HE, Assaf GS, McCorkell L, et al. Characterizing long COVID in an international cohort: 7 months of symptoms and their impact. EClinicalMedicine. 2021 Aug;38:101019. external-link-symbol

9)Working together to understand long-term effects of COVID-19 – The Schor Line, NINDS external-link-symbol

10)Komaroff AL, Lipkin WI. Insights from myalgic encephalomyelitis/chronic fatigue syndrome may help unravel the pathogenesis of postacute COVID-19 syndrome. Trends Mol Med. 2021 Sep;27(9):895-906. external-link-symbol

11)Ståhlberg M, Reistam U, Fedorowski A, et al. Post-Covid-19 Tachycardia Syndrome: A distinct phenotype of Post-acute Covid-19 Syndrome. Am J Med. 2021 Aug 11:S0002-9343(21)00472-1. external-link-symbol

12)Dani M, Dirksen A, Taraborrelli P, et al. Autonomic dysfunction in ‘long COVID’: rationale, physiology and management strategies. Clin Med (Lond). 2021 Jan;21(1):e63-e67. external-link-symbol

13)Nicholas W. Larsen, Lauren E. Stiles, Mitchell G. Miglis. Preparing for the long-haul: Autonomic complications of COVID-19. Auton Neurosci. 2021 Jul 3;235:102841. external-link-symbol


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