【実施模様1】POTS・起立不耐症セミナー2026 ~日常生活の取り戻しをめざして~

【実施模様1】POTS・起立不耐症 ー誤解されやすい病態の診断・治療と鑑別すべき疾患ー(泉井 雅史 先生)

いずい医院の泉井雅史先生に「POTS・起立不耐症 ー誤解されやすい病態の診断・治療と鑑別すべき疾患ー」を講義頂きました。

表紙のスライドと泉井雅史先生

治療の第一歩は「Education(教育)」

・起立性調節障害(以下OD)の診療は難渋することが多い中、先生は海外の論文、ガイドラインも参考にし、海外の研修プログラムにも参加されています。
・書籍「The Dysautonomia Project」に書かれている「非薬物療法TOP10」をご紹介頂き、最も重要なことはEducation(教育:患者さんが病気について学ぶこと)であり「受動的な患者から科学者となり、医療従事者と協力・試行錯誤して、最適な医療を見つけることが重要」と紹介頂きました。


POTSについて

・体位性頻脈症候群(以下POTS)・ODは、症状が多岐にわたり、治療が施設によって必ずしも統一されておらず、人生の重要な時期に発症するため、「人生を大きく変えてしまう厄介な病気」と教えて頂きました。
・発症年齢は、ピーク年齢は中学2年生ですが、高校生や社会人も発症しており、海外も同様で、小児のみの病気ではないことを示して頂きました。
・診断基準や、診断に用いる「起立試験」を教えて頂き、血圧が低下するタイプ(OH)と、脈が増えるタイプ(POTS)に大別されることを解説頂きました。


自律神経について

・自律神経には、体中に張り巡らされて身体をリラックスさせる「副交感神経(迷走神経)」と、活動や緊張を司る「交感神経」が存在していることを教えて頂きました。
・POTS・ODの正体は自律神経障害(Dysautonomia(ディスオートノミア))であり、特に副交感神経が障害され、身体がリラックスできないような状態と教えて頂きました。これが症状として、頭痛や睡眠障害、汗かきや寒がり、息苦しさや喉の詰まり、下痢や吐き気、夜尿症や生理前症候群など多彩な形で現れ、特に自律神経障害が心血管系に現れたものがPOTSやODであると解説頂きました。


自律神経障害(POTS)を引き起こす疾患

・原因には「神経の調節の乱れ(自律神経障害)」「神経の損傷や消失(自律神経不全)」があり、特に自律神経障害を引き起こす疾患として、思春期発症POTS、不適切洞頻脈(IST)、COVID-19後遺症、エーラスダンロス症候群、肥満細胞活性化症候群、慢性上咽頭炎、脳脊髄液減少症を挙げて頂きました。

・「慢性上咽頭炎」「脳脊髄液減少症」は治療法があるので見逃さないようにし、「慢性上咽頭炎」に対する上咽頭擦過療法を実施するケースが多いことや、頭や体幹を強くぶつけた場合などは「脳脊髄液減少症」を疑うことも紹介頂きました。

・POTSと診断されて終わりではなく、原因を見つけることが早期治療につながることを教えて頂きました。
(POTSのサブタイプは佐藤先生の講義を参考にするようにご案内頂きました)


そもそも本当にPOTSなのか?

・先生の外来では、患者さんがODを疑い、起立試験を実施した場合、POTS、INOH、delayed OH、VVSの診断基準を満たすケースは、全体の約半数程度であり、また実際「立ち続けることができない」症状のある患者さんも全体の約6割とのことでした。
・非OD群も含め、多くの患者さんが悩む「朝に起きられない」について、以下のような病気を挙げて頂きました。

• 睡眠リズム後退症候群
• 過眠症や若年性起床困難症
• 起立性調節障害や低血圧症
• 睡眠不足(勉強・ゲーム・携帯など)

ODの薬が全く反応しない場合には、治療法が異なる別の病気を考えることが大切であると解説頂きました。
最後に「病気を治すというより、人生を良くすることが医学の基本」という温かいメッセージを頂きました。

質疑応答では
• 血圧や脈拍の数値以上に、本人の症状が良くなっているかどうかが最も重要、と教えて頂きました。
• 水分補給は、点滴よりも口から補水する方が効果的、という最新の知見を解説頂きました。
• 海外で行われている新たなアプローチとして、迷走神経を刺激する機器(taVNS)も紹介頂きました。


POTS・起立不耐症セミナー2026の各講義

準備が整った講義から、順次掲載いたします。

(1)POTS・起立不耐症 ー誤解されやすい病態の診断・治療と鑑別すべき病態ー(泉井 雅史 先生)
(2)養護教諭の専門性を活かした健康相談と教育的支援(上原 美子 先生)
(3)POTS・起立不耐症の理解と、個別化医療に向けた取り組み(佐藤 恭子 先生)
(4)起立不耐症患者の就学・就労時、復学・復職時の留意点について(岡 孝和 先生)
(5)疾患啓発の進捗、課題、トピックス(POTS and Dysautonomia Japan)

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