以下はPostural orthostatic tachycardia syndrome in children and adolescents external-link-symbol を日本語訳したものです


小児・思春期における体位性頻脈症候群

Jeffrey R. Boris
フィラデルフィア小児病院 小児循環器科

要旨

体位性頻脈症候群(POTS)は米国において最大300万人が罹患しており、少なくとも患者の1/3は18歳未満で発症している。症状としてのPOTSは成人群と小児群で類似しているが、小児POTSにおける相違点として、どのように症状が現れるか、どう経験されるかに影響する小児患者特有の要素がある。このレビューでは成人患者群との類似点、および小児POTS患者が直面している特有の課題、学校教育や患児とその両親との複雑な相互作用も含めて論じる。

概要

体位性頻脈症候群(POTS)は1993年にションドルフとローにより初めて論じられ(Schondorf and Low, 1993)、起立不耐症においてよく見られる病状として認識されるようになった。少なくとも患者の1/3は18歳を迎える前にPOTSを発症している(Raj et al., 2016)。

POTSに罹患すると学校に出席すること、運動に参加すること、仲間たちと社会行動を共にすること、そして日常生活を送ることすら難しくなる。現在のところ、病態生理学的には、立位において血管緊張を適切に維持できず、代償的な頻脈になると考えられているが、POTSの病因はいまだ不明である(Stewart et al.,2018)。

そのため、さらなる確認を得られるまでは、患者管理への取り組みは、症状の一因になっている可能性がある併存症の特定および治療、対処療法、運動、そして二次的または合併症として精神疾患をきたした患者のためのカウンセリングサポート等にとどまる。

診断と考慮すべき点

POTSとは起立性低血圧を伴わず、過度な立位性頻脈を伴って、3か月あるいはそれ以上継続する慢性的な起立不耐症である。POTSは、立ちくらみ、吐き気、呼吸困難、発汗障害、頭痛、疲労感、その他の自律神経障害症状など、日常における一連の症状を伴うことがある。
過度な頻脈とは、現在コンセンサスが得られているものとして、起立位における最初10分間において、収縮期血圧が20mmHg以上低下せず、成人では心拍が30拍/分以上、12歳以上19歳以下の青年では40拍/分以上上昇する、もしくは心拍が120拍/分以上に上昇するものと定義されている(Stewart et al., 2018)。
これは、すべての年齢層において心拍が30拍/分以上上昇という、以前の定義から変更となっている点に留意することが重要である。小児患者群に対して修正を提言することとなったデータは、ティルト検査のデータに基づいている(Singer et al., 2012)

POTSがより頻繁に発症しているのか、単に今日ではよりよく診断されるようになったのかは明らかではない。悲しいことに、疾患の認知度は上がり、オンラインで疾患情報を得られるにもかかわらず、医師、親、教育者はこの疾患を聞いたことが無いことが多い。成人や小児のPOTS患者は、POTSの診断を得るまでに平均7人の医師を受診しており、うち24%は10人かそれ以上の医師の受診を要したとの報告がある。(Raj et al., 2016) 
私が診た患者達における臨床経験も似たような結果であることを確認しているが、上記データは現在においての概要である。この間に、これらの患者たちはしばしば、不安障害、転換性障害、および小児患者の場合は、親たちが直接的または間接的に患者の症状を引き起こしたと感じさせる脆弱性小児症候群のような精神疾患であると誤診断されている。これらの診断遅延の結果、子供たちはしばしばカウンセリングをすすめられるが、鋭い医師は彼らが精神疾患ではないと判断する。この精神科への回り道が診断や治療のさらなる遅延をもたらしうる(Raj et al., 2016)。

このような医療従事者による矛盾したアドバイスによって、家族や患者は医療システムへの信頼感を失ってしまうことがある。誤診断はまた、患者たちが耐え続けている症状、不快感に対して答えを出せないままとなる。

さらなる情報は「小児の体位性頻脈症候群(POTS):研究の現状」をご確認ください


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