「POTS・起立不耐症セミナー2025」では、参加者の皆様にアンケートを行い、患者様がおかれている状況をおしえて頂きました。
| 患者様のおかれている状況 | 参加者の声 研究推進の願い | 無理解による困難 | 就学の困難と支援の願い | 就労の困難と支援の願い | 社会支援の願い | セミナーについて |
患者様のおかれている状況
POTS・起立不耐症セミナー2025アンケート結果(定量)お住まいの地域
今回は関東甲信越からの参加者の割合がやや多かったですが、全国からご参加頂きました。
参加者の属性
患者さま:約45%、ご家族:約41%に加え、医療・福祉の関係者、学校の先生、その他(支援者、関連疾患の方など)にご参加頂きました。
医療・福祉の関係者は、ご自身が患者さま・ご家族であるケースが数名いらっしゃいました。
患者さまの年齢
20歳未満:約33%、20代:27%、30代:25%で、合わせて約85%が40歳未満でした。本来最も生産力のある若い年齢層を直撃していることがわかります。
発症からの期間
発症から間もない方もいますが、数年罹患し慢性的である方が多く、10年以上の方も28%でした。
自力で外出できるおおよその頻度
週5回以上の方は約25%でした。残りの約75%は週5回の外出が難しく、通常の日常生活を送れていないと考えられます。
自力で外出できるおおよその時間帯
午前中に外出できる方は少数で、午後は半分程度、1日中外出できない方は約30%でした。
発症のきっかけとして思い当たること
精神的負荷、身体的負荷、身体の成長に加え、発熱や感染症、新型コロナウイルス感染症や、予防接種、親族の罹患、思い当たるきっかけが無いなどが挙がっています。
参加者の声
参加者のみなさまから医療や社会に向けて、以下のような声を頂きました。
研究推進の願い
心と体が大きく成長する大切な時期、進路や将来にかかわる重要な時期に、思うように体と頭が動かせなくなる、とてもつらい病気です。
対処療法や、年月がたてばよくなる「時間薬」ではなく、積極的な治療法や薬の研究を、これまで以上に進めていただけるよう、親も行政への働きかけが必要だと思っています。ぜひ医療にかかわる先生方にも仲間を増やし、研究を加速していただけますとありがたいです。
10代患者さまご家族
POTSは医療者の中でも認知度が低いと思います。私は複数の医療機関に起立・運動不耐症状を伝えたり、自身でPOTSを知り、起立試験に似たことをし、医師に脈拍の変動を訴えたりしましたが、当初、問題ない脈拍だと判断されてしまいました。
根本的な治療法の研究とあわせて、社会の認知が進むといいなと思います。このような会が催されるのは大変ありがたいです。
30代患者さま
体位性頻脈症候群の重症で、漢方薬や西洋薬をいろいろ試しましたが、効果がある薬に出会えず、2年以上経ちました。治るまでに長くかかると分かっていても、筋力をつけたいと運動を促しても動けないので、回復しないのかと思ってしまいます。病院通いも難しい患者にとって、少しでも近くで起立性調節障害を診てもらえる病院が増えると、本当に助かります。
命に関わる病気でないので重要性は低いのかもしれませんが、もっと研究が進んでくれることを切に願います。
10代患者さまご家族
自律神経に詳しい先生が、もっと会に加わって欲しいです。
POTSの他にも症状がある場合、遺伝性の病気、パーキンソン等の神経難病等、自律神経が関わる病気と、POTSの関係を追及して欲しいと思います。またそういう分野の先生はPOTSも知っていることが多いと感じます。
40代患者さま
医学の更なる発展を祈っております。
40代患者さま
無理解による困難
私は医療者でこの病気になりましたが、他のスタッフに「あー起立性調節障害ね。現代病ね。何甘えてんの。嫌なら仕事やめれば?代わりはいくらでもいるから。」と言われたことがあります。
他の病気には寄り添う医療者にわかってもらえないこと、自分は患者さんに寄り添ってきたつもりだけど、自分が患者になって理解してくれる人は少なかったことに、悲しい気持ちでいっぱいになりました。
目に見えないのに、こんなに辛い病気があることを患者になり初めて知りました。この病気は外から見ると辛さもわからず、怠けて見えることが、さらに患者を苦しめる要因だとも思います。
この病気を研究して下さる方々には感謝の気持ちでいっぱいです。
30代患者さま(医療従事者さま)
起立性調節障害やPOTSを知る先生が身近にいません。精神の問題で片付ける先生ばかり。だからと言って精神科に行くと、専門ではない、と言われます。
どうかPOTSという症状があり、苦しんでいる人がいる事を広めてください。そして、医者に繋がれる選択肢を増やして欲しい。
10代患者さまご家族
病院やお医者さんが病気のことを知らなさすぎるし、他との連携がなさ過ぎです。
理想は「こういう病気じゃないかな、自分は詳しくないし、ここでは十分にみれないけど、◯◯病院の◯◯先生が詳しいから紹介するよ、こういう治療がいいと聞いたらからやってみよう」等ですが、
現実は、「そんな症状出ませんよ」 (でも実際目の前で苦しんでいる)、「次は何をしましょうか」 (患者に聞くのか)、「他の病院のことはわからないので、行きたい病院があれば」(素人では限界があるので、理解ある病院や治療できる先生を教えてほしい)等、治療方法や薬を調べるのも、他の病院や先生を探すのも、患者側です。そして調べた結果、怪しいものにも手を出したり、死ぬほど悩んだりする。
正しい診断と適切な治療をすみやかに受けられるよう、社会を整備してほしいです。
20代患者さまご家族
自分の知らない事象について理解しようとせず、理解できないものをすべて否定する態度をやめていただきたい。
50代患者さま
体位性頻脈と慢性疲労症候群の専門医が地方にも欲しいです。慢性疲労症候群の専門医は、治療費が高額で、東京までの交通費も高く、続けられません。
闘病が長年続き、動けないことが当たり前になってきています。
20代患者さまご家族
就学の困難と支援の願い
息子の通っていた私立中学は“昭和”を地で行っており、起立性調節障害に対する理解がありませんでした。中高一貫校でしたが、結果として通信制高校に進み、塾などの力を借りて一生懸命学んでいます。
この病気を発症すると、体調不良で通学や入試に行くことができず、進路を諦めないといけない子どもたちが多数いることを知って頂きたいです。
政府もDX化を推進しているならば、病気で学ぶ機会を奪われている生徒たちを、デジタル技術を利用し救済して頂きたいと思います。
10代患者さまご家族
病気が引き金で、なかなか社会生活に復帰出来ない。体調が安定しない中、病気は病院、生活は学校、と相談先がバラバラで、それらをつなぐ相談場所、情報提供が少ない(入院病児なら、体力回復プログラムの提供、学習復活プログラムなど、病院内の分校で支援を受けられるのに)
自宅療養は、情報が少なく、いきなり通常の社会、学校生活には体力面、学習面でついて行けない。慣らし運転で自信をつけさせる機関などがあれば活用したいが、なかなか無い。
自治体での取り組みなど、金銭的な負担が少なくフォローしてほしい。家にこもっている子供が居ると、親は動きを制限されたりするので、わかりやすく案内してほしい。
10代患者さまご家族
国として動いてくれないと、後に続く患者・家族は、同じ対応の繰り返しになると思います。義務教育の学年でも、疾患生徒へのサポートは道半ばと感じます。高等教育の学年では、進級・卒業に必要な単位・出席へのサポートが急務と感じます。辛い状況が改善されますように。
患者さまご家族
就労の困難と支援の願い
思うように社会に参加できず、将来に大きな不安と恐怖があります。症状の大きな悪化を繰り返しています。そのたびに、回復に数年単位の時間がかかっており、しかも、それ以前と同じようには体調が戻りません。
「命にすぐに関わらない病気だから問題ないだろう」と思われがちですが、働けないなら路頭に迷う事になってしまいます。この病気の恐ろしさと残酷さをもっと知ってほしいです。
30代患者さま
16歳で発症し、自力で外に出ることがほとんど出来なくなりました。めまいを我慢しながら、夕方からのアルバイトに週2回行くのがやっとです。社会的救済などあるのでしょうか?
10代患者さまご家族
この病気をわかっている先生が少ない。通勤がきついので在宅勤務で探すが、障害者手帳がなく、在宅勤務できる企業が少なく、就職、転職が難しい。
障害者手帳をもらえたら、働く環境が増え、経済困窮が少なくなると思う。社会におけるこの病気の認知度が低いので、症状を軽く見られてしまう。
20代患者さま
社会支援の願い
病名からでは想像もつかないほど、生活する上で様々な困難が伴います。立てないなら車椅子を使えば解決するという単純なものではなく、病状に合わせたサポートが必要です。生活のQOLの低さに見合った医療や福祉、経済的サポートが受けられるようになることを願っています。
30代患者さま
重症な起立性調節障害の患者は、主治医が書類を書けば、障害者手帳や障害基礎年金を取れるようになって欲しい。
20代患者さまご家族
近い未来、手厚いサポートを受けられるときは来ますか?年齢を重ねてから安心するのではなく、若いうちに楽しみたい。
家族のサポートも必要だけど、一人で暮らせるようになりたい。外の居場所も必要だと思う。自由になりたい。
20代患者さま
家族に対する心理的ケアや、症状が長期化した時に、入院等で症状を確認するサポートシステムを作ってください。公的補助があると利用しやすいです。
回復がよめないので、本人も家族も追い詰められる事が、年度の変わり目や進級時期に頻発してます。本当に助けてほしいです。
10代患者さまご家族
福祉制度、行政の制度が整っているのか?よくわからない。
40代患者さま
セミナーについて
セミナー実施後に下記のようなお声を頂きました。
- なかなか周りに理解されなくて、悶々と過ごしている日々に、前向きになれる有意義な時間でした。
- 実践したいことがありました。長年苦しんできたので、少し希望を感じる情報があって嬉しかった。
- アーカイブ配信もあり、ありがたいです。
- 適宜あった休憩時間は、不調患者さんへの配慮かなと感じ、好印象でした。
- 医療の専門の方々の話を、地方でもオンラインで聞くことができ、とてもありがたいです。
- 年金までテーマを広げてくださったおかげで、治療が長引いたときにも備えることができると思います。
- コミュニケーションブックが、とても読みやすく、進化していると思いました。
- このような素晴らしい勉強会が、今困っている多くの人々や、治療をされている先生達にも届いてほしいです。
- 様々な分野で研究や支援をされている方がいるのだと分かり、勉強になりました。
- 今後の啓蒙活動に少しでもお役に立てればと思います。
- 個人でも何か活動できればと感じております。
これからもPOTS・起立不耐症の理解が深まり、診療や支援につながり、実践できることが増え、悶々としていることが減り、お一人お一人の状況が良くなるように、取り組んでまいります。
■ 過去のセミナーの実施模様・アンケート結果 |