【実施模様1】POTS・起立不耐症セミナー2025 ~重症例・難治例への様々なアプローチ~

【実施模様1】POTS・起立不耐症の症状や診断、治療やセルフケアについて(佐藤恭子先生)

東京女子医科大学附属足立医療センター 内科・リハビリテーション科の佐藤恭子先生に「POTS・起立不耐症の症状や診断、治療やセルフケアについて」を講義頂きました。

表紙のスライドと佐藤恭子先生

起立不耐症(OI)とは、起立時の循環調節機構の障害で、強度のめまい、ふらつき、悪心、疲労感、動悸 、失神などで立てなくなる病態の総称で、日常生活に困難をきたし、小児領域では起立性調節障害とよばれていること、POTSはOIの代表的な疾患で、立位に伴う症状、その他の症状があること、

POTSの問題点として、致死的ではないが患者の社会生活を著しく障害し、病態生理が完全に解明されておらず、疾患の社会的認知度が低い、そして最も活動的、生産的な世代での罹患であることをお話頂きました。


OIは、POTSのほかにも、血圧・心拍が変化する神経調節性失神(NMS)、起立性低血圧(OH)があります。
またOI関連疾患として、コロナ後遺症、免疫異常、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)、脳脊髄液減少症などがあり、

共通するメカニズムとして、自律神経系の調節障害、血管調節機能の低下、炎症性・免疫学的要因、末梢・中枢神経系の機能異常などが考えられていることを教えて頂きました。


POTSの診断基準は、起立試験やヘッドアップチルト試験で、立位時に心拍数が30bpm以上上昇して症状が悪化し(20歳未満では40bpm以上)、臥位で改善すること。大人では6カ月以上続くこと。立位で頻脈になる他要因がないこととされています。

脈拍は上がるけれども症状が無い場合はPOTSとされません。世界的に、確定診断までに時間を要し、その間に家庭や職場の理解を得られない患者が多くいらっしゃいます。

POTSの代表的な病態別サブタイプとして、高アドレナリンPOTS、神経障害性POTS、自己免疫性POTS、低容量POTSを教えて頂きました。


治療の非薬物療法として、

  • 十分な水分+塩分の摂取。
  • 疲れる前に休む。睡眠の確保。
  • 足からウエストまで覆われている弾性ストッキングの着用。
  • 運動療法は、「ゆる体操」などのダイナミックリラクゼーション。特に、寝たままできる「ねゆる3点セット」をゆったり行う。
  • 「呼吸法」は体幹全体を均等につかうイメージで行う。
  • 「起立訓練」は、柱のかどに背中の脊柱起立筋の筋肉を当て、ゆっくりめり込む感覚でマッサージ効果が加わる「壁柱角縦割脊法」
  • 「有酸素運動」はお話しながらできる程度。

薬物療法には、交感神経を抑えるβ遮断薬、末梢血管を収縮するメトリジン、副交感神経の働きを高めるメスチノン、腹痛が強いときはブスコパン、脈拍のみを抑えるコララン、循環血液量を増やすフロリネフ、ミニリンメルト。漢方薬。睡眠障害にはロゼレム、メラトニン、ベルソムラ、デエビゴ。上咽頭擦過療法(EAT)。また自己免疫性自律神経説障害や自己免疫疾患を合併する重症POTS患者に選択的な免疫介入療法を教えて頂きました。


OIには多様性があり、すべてのOIに有効な治療方法はなく、これまでに知られている安全で効果の高い方法から行うこと、サプリや整体は、心地良いと感じるものは主治医に伝えながら行ってよいこと、一次的に悪くなることがあっても自分を責めないようにし、社会のなかでどのように生活していくかが大切になる、というお言葉を頂きました。

講義のまとめ画像

【実施模様1】POTS・起立不耐症の症状や診断、治療やセルフケアについて(佐藤恭子先生)
【実施模様2】自律神経疾患における漢方治療(山本巌漢方)(上松章子先生)
【実施模様3】とらえにくい症状に対する診療・支援の課題と取り組み(野村篤史先生)
【実施模様4】はじめての障害年金(早川靖雄先生)
【実施模様5】症状や困り事を伝えるコミュニケーションの整備(POTS and Dysautonomia Japan