起立不耐症・起立性調節障害は、軽症や、比較的短期間で治るケースはわりと知られていますが、なかにはとても深刻な方がいることは、あまり知られていません。また、おとなの患者さんがいることも、日本ではまだほとんど知られていません。しかし実際はいらっしゃいます。
「起立不耐症・起立性調節障害セミナー ~重症例・難治例の理解とサポート~」では、開催前に参加者にアンケートに答えて頂き、患者様がおかれている状況をおしえて頂きました。以下にご紹介いたします。
お申込はご本人様が約2割、ご家族様が約7割。また医師、看護師、学校の先生などからありました。
患者様の年齢層は、おおよそ高校生以下が約60%、18歳以上が約40%。発症からの期間は、3年以上が約45%、5年以上が約30%。
長期間治っていない患者様が確かにいらっしゃることがわかります。
日常生活への影響について「自力で外出できるおおよその時間」は、午前中に外出できない人が約70%で、一日中活動できない方もいらっしゃいました。
さらに「自力で外出できるおおよその頻度」が、週3回かそれ以下しか外出できない人が全体の約70%、2週間に1回かそれ以下しか外出できない人が約17%でした。
起立不耐症・起立性調節障害が重症になると、若い方々の就学、就労、日常生活が、とても困難になってしまうことがわかります。
また参加者の皆様から、以下のようにたくさんの声を頂きました。
【理解について】
教育も就労も脅かされる、この病気の認知、理解向上を望みます。
10代患者さまご家族
症状が辛いだけでなく、体調不良で活動できる範囲や時間が極端に限られていて、大変な思いをしています。
少しでも理解とサポートをしてくれる方が増えると嬉しいです。
20代患者さま
家族でさえも怠けてるだけじゃないか、本当はしんどくないんじゃないかと疑ってしまったりして、そのようなことを言うと、本人が余計にしんどくなってしまうという、負のルーティンを繰り返していました。
今はいい病院のいい先生と出会えて、子供達も私も少し救われてます。
10代患者さまご家族
病院や人に会っている時は、心も体もかなり頑張っているので、診察を受けている時、学校の先生に会っている時、祖父母と話している時は、一番元気で頑張っている(調子が良いのではなく、かなり無理をしている)姿であることを知ってほしいです。
10代患者さま
毎日毎時間毎秒、苦しくて辛いです。
終わりの無いトンネルをレールの上で横たわって進んでいるような、底の見えない深海にずっと沈んでいくような辛さです。
同い年の人のように普通に働いたり普通に出かけたりする事も出来ず、徒歩3分のコンビニにすら行けません。
座って本を読むのも、やかんのお湯が沸騰するまで、立って待つことすらもできません。
20代患者さま
まだまだ知られていない、又は、やる気の問題だと理解を得られず、軽くみられることの多いこの病気が、10年以上治らず、人生が大きく狂ってしまうこともあるのだということを、少しでも知って頂きたいです。
20代患者さま
動けなくなってから丸8年ですが、目に見えない分、身体への負荷、身体のしんどさが理解されず、やむをえず動いて寝込んでも、
「それができるならこれもできる」と言われて、理解されていません。
40代患者さま
【医療・支援について】
成人難治者の診療をして下さる医療機関の増加と、支援制度の適応・発足がなされる日がくる事を願っております。
20代患者さま
外でも家でも、満足に動けず、働くことも出来ない。特効薬も無く、病気の治る目処も立たない。まったく未来が見えません。
名前が知られていない、解明されていない、国に指定された難病でもない。それでもたしかにこの病気に苦しんでいます。どうか助けてください。
20代患者さま
我々精神科だけで抱えててよい疾患ではないと思う。
身体科の介入を強く望みます。
医師
起立不耐症もCOVID19と同じように、多彩な症状があり、いろんな科の医師が関わり、連携する必要があることを、もっと医療者が意識し、考えてくれるようになることを願ってます。
研究が世界的に進むことで、これからの治療や、社会の病気の認識・理解が広まること、誰もが平等に生きやすい社会になることを信じて、一歩一歩、今できることを一生懸命にやっていこうと思います。
医療従事者/患者
就労移行支援を利用していますが、そのような福祉業界でもPOTSの認知度は低いです。
20代患者さま
この病気になってから、記憶力、思考力がどんどん低下して、小さい文字も読めなくなり、勉強が全く出来なくなりました(ブレインフォグ?)
「動けなくても映像授業ぐらい見れるでしょ?」「教科書ぐらい読めるでしょ?」と言われますが、必死に読んでも、頭に意味が入って来なくて苦しんでいます。
脳の機能低下について、もう少し分かっていただけると嬉しいです。
10代患者さまご家族
社会活動ができないという意味で、QOLだけでなく人生まで左右する病気で、個人にも社会にも極めて損失が大きい疾患と思います。医療経済的研究としてほとんど取り上げられておらず、臨床研究も少ない理由は何でしょうか?
Key Opinion Leaderが少ない、評価尺度が確立していない、病態が複雑で研究成果が出しにくい、新薬開発する会社がない、等でしょうか?
10代患者さまご家族
【就学・就労について】
学校の先生にも、多くの医師にも、障害のことを知っていただくことができたら、不自由な側面や、どのようなことに気をつければいいか、できることを可能な範囲でできる生活を、支えていくことができると思います。
10代患者さまご家族
教育の現場においてもダイバーシティについて、具体的に真剣に考えてほしいです。
入院して全く学校に行けない辛い思いをしているお子さんがたくさんいらっしゃると同時に、日中辛くて動くことができない子供がいることも考えて欲しい。
10代患者さまご家族
学校の保健師の先生やスクールカウンセラーとの連携が心強かったです。
10代患者さまご家族
学校現場で心理的サポートが機能していません。
10代患者さまご家族
学校でできることは無いと言われました。
10代患者さまご家族
公立の中学が遠距離のため、体力面から通えないので、近距離の私立に通学させています。
高校教師の友人によると、確実に起立性調節障害の子が増えているとのこと、理解者も増えているのでは、と話していました。
10代患者さまご家族
中3の初めに発症しましたが、義務教育なのに1年間全く教育を受けることができませんでした。
学校の授業を受けられない分、塾の個別指導で学ぶしかありませんでした。
10代患者さまご家族
この病気の理解をしてくれる人が少なすぎます。
義務教育の間のフリースクールのような場所があればいいなと感じます。
勉強をできる場所が学校のクラスの中以外にも確保できたらいいのに、と思います。
10代患者さまご家族
大学進学を望んでいますが、まだ午前中に連日活動することが難しいため、通信制や夜間以外の選択肢が選べなさそうです。
POTSで悩んでいる同年代の方が、進路・就職など、この先の選択をどのようにされているのか、具体的な例があれば教えて頂きたいです。
10代患者さまご家族
(通信制高校に入り、まもなく卒業ですが)模試などは朝からあるので断念しています。
今年4月からの進路も未定です。今後どうしたらよいのか途方に暮れています。
10代患者さまご家族
私は高3になっても全く治っていないのに、高校の先生は起立性は治るものと思っていて、配慮や今後のことを相談したい時に、ただでさえ体調が悪くて大変なのに、誤解を解くのがとても大変で、しんどかったです。
20代患者さま
今まで飲食店などで働いたことがありますが、長時間立っていると具合が悪くなり、長く続きません。
2年前にやっとPOTSと診断され、15分以上立っていられないと言われました。
どのような職業で働く事ができるのか分からず、困っています。
30代患者さま
先生方の講義や、参加者の皆様の声やデータを通じて、病気の認知・理解や、今後のサポートにつながることを願っております。
■ 過去のセミナーの実施模様・アンケート結果 |