米国のヴァンダービルト大学と患者団体Dysautonomia Internationalが2015年から2016年にPOTS患者の大規模調査を実施しました。本調査を牽引している現在カルガリー大学所属のSatish Raj医師により2016年12月に発表された中間報告を以下に掲載いたします。
・調査票 Diagnosis and Impact of POTS. Vanderbilt University.
・調査結果 The Big POTS Study: Patient Powered Research and Plans for the Future. Dysautonomia International(動画)
調査概要
目標 | 大規模、横断的調査、特定医療機関の推薦などのバイアス無し |
方法 | インターネットによる横断的調査 |
対象者 | POTSと診断されている患者(確認なし) |
*本調査はヴァンダービルト大学倫理委員会で承認済み。
*Dysautonomia International(米国の患者団体)による情報提供や事前テスト済み。
調査受付期間 | 2015年7月12日~2016年9月30日 |
有効回答数 | 4178名 |
回答時間 | 目標は30分間としたが、結果は60分間以上を要した |
主な確認事項
診断の難しさ/つらさ(悲しみ)の程度/社会的影響/経済的なことやその他の影響-失業、教育、医療費/障害の程度/検査内容/活動レベル/治療方法/症状/併存疾患/家族の病歴/QOLや疲労感の程度
患者像
・性別:女性 90%以上、男性 10%未満
・人種:白人 90%以上、黒人 僅か、アジア系 僅か、Mix 数%、その他 僅か
・平均就学年数:14.8年
発症年齢
・POTS患者の44%は18歳以上で発症
・発症のピークは14歳
併存疾患
・POTS患者の83%は併存疾患がある。
・エーラスダンロス症候群の合併:28%
・自己免疫疾患の合併:16%
・エーラスダンロス症候群とPOTSの合併型における自己免疫疾患:18%
・併存疾患の一部はおそらく未診断の状態
自己免疫疾患の併存
・回答者の16%は自己免疫疾患を併存
主な症状
診断に要した期間
・平均 49 ± 89ヶ月(平均値 ± 標準偏差)
診断されるまでに受診した医師の数
・平均 7 ± 8名(平均値 ± 標準偏差)
診断した医師の診療科
就学について
POTSは就学が難しくなることがある。
・患者の89%は学校に行けない。
・患者の28%はホームスクーリングを受けている。
・患者の25%は退学に追い込まれている。
・患者の38%は大学進学や大学卒業を遅らせたり延期している。
今後の展望
・POTSの経済的影響
・人間関係への影響
・QOLへの影響
・さまざまな治療方法の効果
・サブタイプごとの違い
-エーラスダンロス症候群を併発している患者としていない患者
-男性患者と女性患者
-発症年齢による違い
-発症契機による違い(ウイルス感染後、脳震盪後、妊娠後など)
・ 追跡調査
-時系列データ
・関連調査
-患者への再調査のための治験審査委員会の承認・許可
-マスト細胞活性化
-その他?
・今回の調査データを臨床データと結びつける
-この研究のための資金が必要・・・
結論
・POTSは白人女性に多く見られる疾患である
・主な併存疾患は
-偏頭痛
-過敏性腸症候群
-エーラスダンロス症候群(関節可動亢進型)
・これらのデータは間違いなくPOTSのより正確な病像を提供すると考えられる。