以下は Antiadrenergic autoimmunity in postural tachycardia syndrome external-link-symbol のAbstractの日本語訳です

目的
体位性頻脈症候群(POTS)は、よく見られる消耗性の循環器疾患で、起立時に心拍数が顕著に高くなり、広範囲に渡るアドレナリンに関わる症状があらわれることを特徴としています。我々はPOTSを発症する原因を特定するために、アドレナリンα1受容体(α1AR)およびアドレナリンβ1/2受容体(β1/2AR)に対する自己抗体が病態生理学的役割を果たしている可能性について検証しました。

検証方法と結果
POTS患者17人、再発性の血管迷走神経性失神(VVS)患者7人、そして11人の健康な被験者から採取した免疫グロブリンG(IgG)について、トランスフェクトされた細胞内*1におけるα1ARおよびβ1/2ARの働きやリガンド応答*2を調節する作用、ならびに生体外における摘出マウス精巣挙筋細動脈の収縮に関する変化を分析しました。

細胞ベースの試料では、α1ARおよびβ1/2ARに対するPOTS患者のIgG活性は、VVS患者や健康な被験者に比べて、顕著に高まっていました。POTS患者17人の内、8人の患者はα1ARを、11人はβ1ARを、12人はβ2ARを活性化する自己抗体を保有していました。α1AR、β1/2ARを薬理学的に遮断すると、IgG誘発によるα1ARおよび β1/2ARの活性は抑制されました。

POTS患者17人の内、8人のIgGはフェニレフリンのα1AR活性化作用を抑制し、13名のIgGはイソプロテレノールのβ1AR活性化作用を増強する結果となり、受容体の直接活性化作用とは関連していないことが示されました。

POTS患者のIgGはマウス精巣挙筋細動脈を収縮させますが、この収縮はα1AR遮断薬によって抑制されました。被験者の起立時の心拍数はIgG介在下のβ1ARおよびα1ARの活性とは相関がありましたが、β2ARの活性とは相関がありませんでした。

結論
これらの結果により、抗アドレナリン受容体自己抗体とPOTSとの強い関連性が検証されました。そしてα1ARおよびβ1ARの反応性についてアロステリックな影響*3が体位性頻脈の病態生理学で重要な役割を果たしているという概念を裏付けました。


*1トランスフェクトされた細胞:トランスフェクトとはDNAやRNAを人為的に細胞に導入することを言い、このような細胞を用いてたんぱく質などの研究が行われています。

*2リガンド応答:ここでは、受容体に物質が結合することによって、受容体の活性が強まったり弱まったりすることを指します。

*3アロステリックな影響:ここでは、リガンド応答のうち、受容体に直接作用する部位とは異なる部位に、物質が結合することによって、受容体の活性が強まったり弱まったりする影響が現れることを指します。

参考
Antiadrenergic autoimmunity in postural tachycardia syndrome external-link-symbol Artur Fedorowski Hongliang Li Xichun Yu Kristi A. Koelsch Valerie M. Harris Campbell Liles Taylor A. Murphy Syed M. S. Quadri Robert Hal Scofield Richard Sutton Olle Melander David C. Kem
EP Europace, Volume 19, Issue 7, 1 July 2017, Pages 1211–1219,
Oxford University Pressから翻訳許可を得て掲載しています